あざと女子の恋の歌はあざとくない。


「あしびきのなんて、めっちゃ切ないよね」

「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」

「それ〜!」


三鳥の尾の長い様子から、恋人のいない侘しい夜を歌った歌。

この時代は通い婚かつ一夫多妻制。
夫が別の妻の元に行っているのだと思いながら、一人きりの長い夜を過ごすなんて、何とも切なすぎる。


「……意外」

「何が?」

「華村って、そういう昔の恋愛観、理解できないタイプだと思ってた」

「現代的に置き換えて考えてみたら、なんかわかるなぁって。
たとえば好きな人には本命がいて、私は2番目でいいから!って付き合ってもらった女性って風に考えてみるの。

きっと今頃本命の彼女の元に行ってるんだな…って寂しい夜を過ごしてる。でも彼のことが大好きだから、この関係をやめられないの…」


あたしは2番目なんて絶対ごめんだけど、好きな気持ちはどうしても抑えられないものだと思う。
2番目でもいいから、大好きな人の傍にいたい。


「なーんて考えると、切ないよね〜〜」

「…なるほど、現代に置き換えるなんて考えたことなかった」

「緋色は典型的な古典ヲタクだもんね」

「ありがとう、華村」

「え?」

「華村が興味持ってくれたおかげで、新しい楽しみ方を知れたよ」


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