あざと女子の恋の歌はあざとくない。
言われてみれば、あたしがこんな風に素のままで話せる男子って緋色だけかも。
あたしのあざといが通用しないムカつく奴って思ってたけど、実はありのままでいられる特別な存在ってこと?
あたしの理想とは程遠いけど、それもアリなのかもしれないな――…
「あれっ、もしかしてお前、住江?」
急にあたしたちの目の前に、男女数人のグループがやって来た。
なんか男も女もチャラそうだけど、緋色の知り合い?
「……。」
「お前、住江だろ?生まれる時代間違えた時代錯誤野郎!」
はあ?いきなり何なのこの男?
「時代錯誤ってどうゆうこと??」
「こいつさぁ、同中だったんだけどよ、古典ヲタクでいっつも古典ばっか読んでたんだよ。
古文の授業中以外でも読んでてさ、かるたとかやってて今何時代?みたいな?」
なんっなの、こいつ?
それのどこがおかしいって言うのよ……。
「平安時代に生まれてたらいっぱい友達できたのにな〜〜」
「…………。」
「つーかその隣にいる子、めちゃくちゃかわいくねぇ?なんでこんなダセェ奴と一緒にいるの?
君みたいな子がもったいねーよ。オレらと遊ばん?」
あたしはとびっきりの笑顔を向けた。
若干上目遣いで小首を傾げ、口はアヒル口。
グロスを引いたぷるぷるの唇が更に強調される。
完璧なあざとさに男どもはゴクリと喉を鳴らし、女どもは表情を歪めたのがわかった。
「あんたなんかより緋色と一緒にいるに決まってるじゃない?」