あざと女子の恋の歌はあざとくない。
マジでふざけすぎじゃない?
絶対に退くわけないっつーの!!
「お、お前が出てけよ……っ!」
驚くことに、緋色はあたしの前に立ち塞がった。
自分よりも背の高いチャラ男を、若干震えながらも睨み付ける。
「こ、ここは俺たちの場所だ……。
出て行け」
「は?」
「それからっ、華村には手を出すな……!!」
――緋色……っ。
「ダセェくせに一丁前に彼女守ろうってか?
カッコつけてんじゃねーよ!」
「緋色……!!」
咄嗟にヤバいと感じて叫んだその時、
「――何してんの?」
「あ……?」
チャラ男の腕を掴んで止める九竜くんの姿があった。
後ろの方でツレの女が「えっ超イケメンじゃない!?」と場違いな声をあげている。
「ここ、俺らの席なんだけど」
「ぐ……っ」
流石は九竜くん、片手で簡単に掴んでるように見えるけど、チャラ男が全く振り解けない。
流石空手部のエースだ。そのまま捻り上げ、チャラ男は情けなく悲鳴をあげていた。
「あ、さっきのは写真に撮らせてもらったので、そちらから先に手を出した証拠はありますから」
しれっと黄瀬くんはスマホを見せる。
正にチャラ男が殴りかかろうとする瞬間が収められていた。
いつの間にこんな写真を……!