あざと女子の恋の歌はあざとくない。


* * *


あたしの涙が止まる前に、夜空に花火が打ち上がった。
次々と咲き誇る花火を見ているうちに、いつの間にか涙は止まっていた。

チラリと隣に座る緋色の横顔を盗み見る。

緋色は黙って花火を見つめていた。
花火の光が緋色の顔に反射して、時々輝いている。

……なんでだろうな、花火よりも緋色の横顔が輝いて見えちゃうなんて。


「……緋色、ありがとう」

「え?」

「ありがとうって言ったの!」

「それは、俺の台詞だと思うけど…俺の方こそ、ありがとう」


ふわりと微笑む緋色の笑顔に、また涙が出そうになる。


「俺、もっと強くなるよ。
あそこで言い返さないのは、かるたに失礼なんだって華村を見て思った。

……ありがとう」


嬉しいのに、泣きたくなる。
ううん、嬉しいからこそ泣きたくなるのかな。

泣きたいくらいに、気持ちが溢れて仕方ない。



「……緋色、好き」



あたしの想いは花火とともに花開いた。


「……え?」


緋色は驚いてあたしを見つめる。
どうやらその耳に届いてしまったらしい。

花火の音に紛れると思ったけど――、そうだ緋色は、人一倍耳がいいんだった。

咲玖ちゃんたちには聞こえてなくて、みんな夢中で花火を見てるんだもん。


< 19 / 25 >

この作品をシェア

pagetop