あざと女子の恋の歌はあざとくない。
* * *
あたしの涙が止まる前に、夜空に花火が打ち上がった。
次々と咲き誇る花火を見ているうちに、いつの間にか涙は止まっていた。
チラリと隣に座る緋色の横顔を盗み見る。
緋色は黙って花火を見つめていた。
花火の光が緋色の顔に反射して、時々輝いている。
……なんでだろうな、花火よりも緋色の横顔が輝いて見えちゃうなんて。
「……緋色、ありがとう」
「え?」
「ありがとうって言ったの!」
「それは、俺の台詞だと思うけど…俺の方こそ、ありがとう」
ふわりと微笑む緋色の笑顔に、また涙が出そうになる。
「俺、もっと強くなるよ。
あそこで言い返さないのは、かるたに失礼なんだって華村を見て思った。
……ありがとう」
嬉しいのに、泣きたくなる。
ううん、嬉しいからこそ泣きたくなるのかな。
泣きたいくらいに、気持ちが溢れて仕方ない。
「……緋色、好き」
あたしの想いは花火とともに花開いた。
「……え?」
緋色は驚いてあたしを見つめる。
どうやらその耳に届いてしまったらしい。
花火の音に紛れると思ったけど――、そうだ緋色は、人一倍耳がいいんだった。
咲玖ちゃんたちには聞こえてなくて、みんな夢中で花火を見てるんだもん。