あざと女子の恋の歌はあざとくない。



「緋色が好き」


もう一度言ってみた。
やっぱり緋色は聞こえたらしかった。


「冗談…じゃないよね……?」

「冗談じゃないわよ。
冗談だって思いたいけど、好きになっちゃったんだもん」

「えっと……、」

「でも、付き合って欲しいとは思ってないから」

「え?」


緋色はまだ驚いたように目を丸くしてあたしを見つめる。


「だってあんた、今はかるたのことで頭いっぱいでしょ?」

「……。」


やっぱり否定しないわ、この男。


「どーせ今はかるたに勝てないってわかってるもん。
だから付き合って、とは言わない」

「華村…」

「でも、いつかあんたの口から、付き合って欲しいって言わせてみせる!」


そう言ってあたしは笑った。

あざといにあざといを重ね計算され尽くした笑顔じゃなく、ありのままのあたしで微笑んだ。


「だから、覚悟しててよね!」


カッコ悪くても、不器用でもいい。
かわいくないけど精一杯の恋の歌を、緋色だけに綴ってみせるから。

この歌が緋色の胸に響いた時、返歌をちょうだいね――?


< 20 / 25 >

この作品をシェア

pagetop