年下男子は天邪鬼
そして大地を支えながら
アパートの地獄の階段を登り終える頃には
私はすでにクタクタになっていた。

「大地着いたよ!鍵はどこ?」

「ん~、今日は依子のとこに泊まりたい」


甘えた声でお願いする大地を
「だめ!」
その一言で一蹴した。

大地のスーツのポケットを手当たり次第に
探っていく。

そしてスーツの内ポケットから鍵を見つけると「開けるからね」と一言断りを入れてから
がちゃっとドアを開けた。

「ほらっ、靴脱いで」

そして、大地を支えながら彼の部屋の中へ入っていく。
大地の部屋はシンプルなインテリアで
統一されていて確実に私の部屋より綺麗に
している辺り、女として恥ずかしさと情けなさが込み上げてくる。

しかし、重い...

すでに体力の限界を超えている私は
寝室までいくと大地をベッドへ座らせた。

漸く解放されホッと安堵の表情を浮かべた。

もう、疲れたし早く帰って寝よう...

私は大地の前にしゃがみこむと
「大地、私は帰るけどちゃんと着替えて
寝てね。鍵はポストに入れとくから。」
大地の顔を覗きこんで話すが
未だにトロンと虚ろな目の大地は
聞いてるのか聞いてないのか定かではない。

まあ、男だし大丈夫だろう...

しかし、立ち上がろうとすると
「帰るなよ!」ガシッと手を捕まれた。

「いや、今日は遅いし眠たいし帰るよ」

「一緒に寝ればいいだろ?」

「ダメだよ。大地ともうあんなことは
したくない...」

これ以上、大地と体だけの関係を
続けてしまうときっと私の心がすりきれてしまう。

「安斉さんが好きだからなのか?」

しかし、大地の口からいきなり
安斉さんの名前が出てきて
「へっ?」と思わず変な声を漏らした。
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