年下男子は天邪鬼
「帰したくない」

大地は思い切り私の手を引くと
ベッドの上に押し倒した。

そして、トロンとした瞳で見つめながら
優しく唇にキスを落としてくる。

「んっ...大地っ...やめよう...?」

私が思い切り大地の胸を押して離すと
大地は悲しそうに瞳をゆらした。

どうして、そんな悲しそうなするの...?

「大地...?」

「依子を帰したくないんだ」

「でも、こういうことするのは私...」

「じゃあ何もしないから...
一緒に添い寝してくれるだけでいいから...」

「流石にシングルベットは狭いし、
今日は帰るよ」

依子は起き上がろうとするが
「駄目」と言って大地に再び
押し戻されてしまう。

「酔う人肌が恋しくなる気持ちは分かるけど、困るよ...
明日、仕事休みだし昼間に遊びにくるから
今夜は帰して...?ねっ?」

私は優しい口調で説得を試みる。

「駄目だ。このまま帰したら、依子、安斉さんにメール送るんだろ...?」

大地は捨てられた子犬のような瞳で
弱々しく呟いた。

「それは...」

私は否定できなくて口をつぐんだ。

「じゃあ、帰さない。」

大地はごろんと仰向けに寝転がると
依子を逃がさないように胸に抱き締めたまま
目をつぶった。

「ちょっと、大地...」私は手で大地の胸を突っぱねて何とか離れようとするが
ガシッと捕まえられて抜け出すことは出来なかった。

これじゃあ、安斉さんに嫉妬しているみたいじゃない...

いやいや、きっと酔ってるだけなのだから
変な期待はしては駄目だ。


私はブルブルと首を横に振って
大地が眠りに着くのを静かに待った。

そして、大地の寝息が聞こえてくると
そっと起こさないように部屋を抜け出すのだった。




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