壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
そっと腰を折り、蒼依の後頭部に口付ける。
「……葉名?」
「わがままになってもいいですか? ──あなたを欲していいですか?」
涙がとまらない。
喉が焼けそうだ。
一度も自分を肯定したことのなかった葉名が、はじめて開かせた欲の花。
いつだって葉名の心は、自分よりも相手に向けられたものだったから。
「あなたを幸せにしたい。だから、あなたの幸せに私を──」
立ち上がり、抱きしめる。
蒼依は葉名の肩に顔をうずめ、涙を流すのだった。
「愛してる。俺が生涯をともにしたいのは葉名、お前だ」
「……はい。私も、愛してます。あなたと幸せになりたいです」
ゆらゆらと揺れる瞳に、ただたゆたう。
見つめあい、やさしいキスをした。
――あなたと肌を重ね、私は里の決まりに背いたのでした。