壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
***
日が暮れ、夜の闇が森を包む。
葉名と蒼依は指を絡ませ手を繋ぎ、歩いていた。
その道中でことの大きさを知る。
連理の枝に背いた者として里の者たちが二人を探していた。
「いたぞー! こっちだ!!」
とんでもないことをしてしまったと青ざめると、蒼依が葉名の手を引き走り出す。
「逃げるぞ、葉名」
「あっ──!!」
走ろうと踏み出すも、葉名の膝がカクンと折れてしまう。
思うように走ることが出来ず、背筋から冷たい汗を流す。
蒼依が汗ばむ手を握りしめ、葉名の身体を抱き上げる。
「少し、我慢してくれな」
蒼依に期待を向けていた人々が牙をむいて追いかけてくる。
葉名を憎悪するように松明をもって走っている。
蒼依の着物を掴むしか出来ない葉名は情けない気持ちになり、己の無力さに嘆くだけ。
(あなたに守られてばかり。それでもあなたにしがみつくしか出来ない)
――それでもこの欲を捨てられない。
***
「くそっ、しつこいな」
「蒼依くん……」
里の入り口にある番の木がたつ草原。
走っても振り払うことの出来ない現状に不安と焦りが追い込んでくる。
「絶対に離すものか! やっと葉名が振り向いてくれたんだ!! ――うっ!?」
「蒼依くん!?」
積雪の上に赤が零れ落ちる。
蒼依の身体がぐらつき、葉名を支えきれずに雪の上に倒れていく。
「今だ、抑えろー!!」
「あっ……」
容赦なく里の者たちが葉名と蒼依を引き離していく。
血を流しながら蒼依は抵抗するも、複数人に抑えられてしまい逃れられない。
「いやだ、離せ! 葉名! 葉名――ぅぐっ!?」
後頭部を殴られ、蒼依は意識を失う。
葉名が手を伸ばしても届かなかった。
「蒼依くん!!」
泣いて暴れるしか出来ない葉名の後ろから依久が肩を掴み、抑えてくる。
「落ち着け、葉名」
「あっ……あぁあああ!!!!」
――こうして取り押さえられ、引き離されたのだった。