壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
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それから何日が経過しただろうか。
葉名は里にある地下牢に入れられ、地上の様子をまったく知ることが出来ていなかった。
「……蒼依くん、大丈夫かな。怪我、治ってるといいな」
膝を抱え祈るは蒼依の無事ばかり。
何も出来ない状態に胃がむかむかとした。
深呼吸をし、気持ちを落ち着かせようとすると地下牢の扉が錆びた音を立てて開く。
現れたのは依久であった。
「暗いなぁ。さすがは地下牢だな」
「依久くん!?」
「どーも。迎えに来たよ」
依久の行動が読めず、葉名は戸惑い汗を握りしめる。
「迎えって、私は」
「まー、こればかりは仕方ないよなぁ。蒼依のこと、好きで両想いだもんなぁ」
チクリと刺すような言葉を受けるも葉名は依久から目をそらさない。
「ごめんなさい。私、あなたの妻にはなれません」
葉名の返答に依久は目を丸くし、吹き出すように笑い出す。
腹を抱えながら目尻にあふれた涙を指で救い、目を細めて葉名を見る。
「別にいいよ。想い合う二人を引き裂くほどオレも残酷じゃないから。……蒼依のこと、なんとか外に出せそうだからさっさと里から出ていってくれない?」
「え?」
スタスタと葉名の前まで歩み寄ると、葉名の腕を掴む。
「ほら、行くよ」
「ちょっと、依久くん!?」
何がなんだかわからず、葉名は依久についていき地下牢から出ていった。