壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜


***


番の木が立つ草原に人が立っている。

目を見開き、その美しい輝きに惹かれていく。



「葉名!!」

「蒼依く……」



青い炎に心を焦がされる。

包み込まれるぬくもりに葉名は込み上げる感情に身を任せ、手を伸ばす。



「会いたかった、葉名」

「私も、会いたかったです」



求め続けた蒼依の背に手をまわし、頬を擦り寄せた。

抱きしめあう二人を見て、依久は腕を組み、息をつく。



「それじゃ、後はご自由にどうぞ」

「依久……」



蒼依は葉名の腕に触れながら依久に目を向け、頭を下げる。



「恩に着る。……家を頼んだ」

「さっさと行ってしまえ。ほんとムカつくから」

「……行こう、葉名」

「はい」



手を重ね、蒼依と葉名は里の外へと出ていこうとする。

その後ろ姿を依久は見送りながら口角をあげていた。



「……甘いよなぁ。本当に甘い。この匂いから逃げられるほどこの里はやさしい場所ではないぞ?」



鼻をくすぐるは甘い匂い。

枝が絡み合うことで発する、秘めた香り……。




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