壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
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番の木が立つ草原に人が立っている。
目を見開き、その美しい輝きに惹かれていく。
「葉名!!」
「蒼依く……」
青い炎に心を焦がされる。
包み込まれるぬくもりに葉名は込み上げる感情に身を任せ、手を伸ばす。
「会いたかった、葉名」
「私も、会いたかったです」
求め続けた蒼依の背に手をまわし、頬を擦り寄せた。
抱きしめあう二人を見て、依久は腕を組み、息をつく。
「それじゃ、後はご自由にどうぞ」
「依久……」
蒼依は葉名の腕に触れながら依久に目を向け、頭を下げる。
「恩に着る。……家を頼んだ」
「さっさと行ってしまえ。ほんとムカつくから」
「……行こう、葉名」
「はい」
手を重ね、蒼依と葉名は里の外へと出ていこうとする。
その後ろ姿を依久は見送りながら口角をあげていた。
「……甘いよなぁ。本当に甘い。この匂いから逃げられるほどこの里はやさしい場所ではないぞ?」
鼻をくすぐるは甘い匂い。
枝が絡み合うことで発する、秘めた香り……。