壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜


呼吸の音が聞こえない。

胸が起伏しない。



「やだ、いやです……。お願い。私、がんばるから……」



握っていた手が握り返されない。



「もっと明るくなります。あなたをたくさん笑顔に出来るように。強くなります・。あなたの隣に堂々と立てるよう……だから」



――もう一度、名前を呼んで……。




「あ……ああぁ、ぁああああああ……!」









――堕ちていく。

これほど己を呪ったことはない。

あなたの言葉にすがらなければよかった。

もっと強ければ戦えた。



――運命に逆らったから天罰が下ったのだ。










「あっちから血の匂いがするぞ! 皆でかかれ!」



容赦なく、蒼依を失った葉名を追いつめる声が届く。

動こうとしない葉名を見て、穂高を鋭く冷たい目つきで葉名を見下ろす。

はじめて穂高が葉名を瞳に映していた。



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