Melts in your mouth
驚いて声も出ない私を差し置いて、相手は更に言葉を続けていく。
「どういう事で悩んでんのか知らねぇけど、平野はちゃんとした奴だから心配いらないだろ。」
「何言って…「適当で軽薄そうに見えても、ちゃんと仕事はするし意外と真面目で誠実じゃんあいつ。何より、菅田に対しての想いは純粋だろうし…平野が人間として筋が通ってるからこそ、俺も馬鹿みたいに焦るんだけどな。」」
その辺にいる普通の男ならもっと余裕でいられたのに、相手が悪過ぎるわ。そう小さく付け加えて苦笑を滲ませた山田が、ポンっと私の頭に自らの手を優しく着地させた。
温かくて優しくて、つくづく山田らしい手の感触に、心臓がギュッと締め付けられる。
「俺の知る限り、平野は菅田を裏切る事はしないと思う。仕事面でも、プライベート面でもな。だから菅田、あんまり考え込んで暗くなる必要はないんじゃね?」
「山田って…。」
「ん?」
「馬鹿なの?何でそんな敵に塩を送る様な言葉くれんの?」
「ハハッ、確かに馬鹿かもな、俺も何してんだって思うわ。でも、陳腐な言葉に聞こえるかもしれないけど、やっぱ菅田には笑ってて欲しいから。」
「……っっ。」
「それに、俺は菅田の事諦めた訳じゃないからな。」