目が覚めたら憧れの峰崎くんと結婚することになっていました

転倒したときのことを思い出す。


宙を舞った傘は、まるで暗い空に出現した花畑のようだった。


「雨空に花が咲いたみたいに見えるんです」


私に続いてタクシーを降りた峰崎くんは、不思議そうに私を凝視した。


「何言って……あっ、そういうことか! さっきからずっと、どうしたんだろうって思ってたんだ。敬語だし。やっと気づいたよ」


峰崎くんが、うんうんと頷いた。


その横でタクシーが静かに出ていった。


「俺たちが話すようになったきっかけも、ユカコが転んだことだったもんな。そうだった。あのときユカコが持ってた傘、そんな柄だったね」

「話すようになった、きっかけ?」

「うん。登校中に俺の目の前でユカコが滑って転んで、」

「そう! 私、登校中に転んだの!!」


お母さんが『帰宅中に転んで』って言ったのは、やっぱり勘違いか何かだったんだ。


今日の朝から今までに何があったのか、峰崎くんに詳しく教えてもらおう。


「峰崎くん、」

「何? 平林さん」


峰崎くんがクスッと笑った。

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