目が覚めたら憧れの峰崎くんと結婚することになっていました
「このまま記憶が戻らなかったら?」
「いいよ。俺だけ強いままニューゲームみたいなもんでしょ。俺もユカコが初カノだったから、」
「えっ、そうなの?」
「そうだよ。だから、慣れるまではどうしていいか、よくわかんなくて。デートの度に毎回緊張してたし。ちょっとカッコ悪かったかも……。2巡目ならもっとスマートにやれるはず」
「すっごく意外」
だって、いつも落ち着きがある峰崎くんが、だよ?
私とのデートに緊張していたことがあるなんて……
「ねえ、私たちが初めて会話したのって、私が登校中に転んだときだったんでしょ? そのときのこと教えて」
「あー、あのときのこと……」
峰崎くんの声はだいぶ眠そうになってきた。ゆっくりで、くぐもっている。
「雨の日、ユカコが傘さして俺の前を歩いてたんだ。そしたら、いきなりだったよー。スコーンって滑って。で、ユカコの傘が俺の目の前に落ちてきて……」
「うん、うん、それで? ……峰崎くん?」
「……はっ! 俺、一瞬寝そうになった」