星空の下で愛を♦年下看護師の彼は彼女に一途な愛情を注ぐ♦
でも、母には1日でも長く生きていて欲しい。
残り時間は少ないかもしれないけれど、なにかひとつでも、明るい未来を見ていて欲しい。


「お母さん……私ね、大切な人がいる。 『結婚しよう』って、約束したの」


〝なにかひとつでも明るい未来を〟

そう思った私の口から、自然と大空とのことを話していた。
それを聞いた母は驚いた様子で私を見たけれど、すぐに先ほどの優しい笑顔に切り替わる。


「そう……嬉しい。 大事な娘が結婚ね……ウエディングドレス姿、見たかったわ」

「なに弱気なこと言ってるの? 見てよ、私のウエディングドレス姿」

「………」


やっぱり、返事はない。 
それがとても悔しくて、拭っても拭っても涙が溢れ出してくる。

しばらくすると母は疲れてしまったのか、スースーと寝息を立てて眠ってしまった。 起こさないように静かに病室を出ると、私はナースステーションの友希にお礼を伝えた。

友希は私の泣き顔に驚いていたけれど、「話せてよかったね」と優しく背中を擦ってくれた。

とりあえず、母とは話すことができて後悔はない。
でも、残された時間をできるだけ母と過ごしたい。 離れていた時間を、少しでも埋めたい。


仕事を終えた私はそんなことを考えながら、私は大空の待つ家へと向かった。
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