運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
「怜さん、改めてよろしくお願いします」

 不安や戸惑いがなくなった訳ではないが、一歩踏み出す勇気も大事だと思えた。

 勘違いからの長いすれ違いを埋める瞬間(とき)がやってきたのだ。桂の将来のためには、大切なことだ。

「ありがとう」

 怜からも自然に言葉が紡がれる。

 子連れで手ぶらでは出掛けられない。怜の腕の中で眠る桂をそのまま預けて、出掛ける準備に部屋へ戻る。

「怜、月島さんを待ってる間にホテルのチェックインをしてくる。ベビーベッドなどお願いして、チャイルドシートも借りてくるよ」
「ああ。頼む」

 怜には気づかないことに、気づいて動いてくれる陸斗は、怜にはなくてはならない存在だ。

 桂は眠りさくらは部屋へ、陸斗がホテルに向かったタイミングで、気になっていたことを聞く。

「さくら狙いの男性ばかりだったな」
「プッ。凄い顔で睨んでましたね」
「下心が丸見えだった」
「確かに、さくらちゃん人気は凄いです。アイドル的なファン感覚の人と真剣な人とがいますが、変な人はいないので大丈夫ですよ」
「変な人はすでに追い払ってくれた?」
「フフッ」

 間違いなく、彩葉によって守られていたのだ。感謝しかない。

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