運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

あの夜のやり直し

 さくらが大きめの荷物を抱え店に戻ってきた。

「凄い荷物だな。足りないものは買えばいいのに」
「子供には色々必要なんです。オムツやミルクなら直ぐに買えるかもしれませんが、服は汚してから買いに行く訳にはいかないんで……」
「確かに……。今まで子供と接する機会がなかったから、俺に色々教えてくれ」
「はい。少しずつ知って下さい」
「ああ」

 神楽坂の冷酷王子とは思えない。満面の笑みで教えを請う姿が新鮮だ。

「さくらちゃん、すれ違いの二年をしっかり埋めて来なさいね」
「うん。彩姉ありがとう」
「ありがとうございます」

 彩葉は、二人にとってなくてはならない大きな存在だ。

「お待たせしました。出られますか?」

 陸斗が戻ってきた。

「ああ。さくら行こう」
「はい」

 二人の新しい一歩がここから始まるのだ。

 店の前には、高級車が止まっている。

「どうぞ」

 陸斗が開けてくれた後部座席には、高級車には似つかわしくないチャイルドシートが設置されている。さくらは、まだ怜の腕の中で眠る桂をもらい、そっとチャイルドシートに寝かせた。

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