運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
「どうした?」

 桂を抱っこした怜が不思議そうに聞いてくるが、よく考えれば神楽坂の御曹司には、特に驚きはないのだろう。

「部屋が豪華過ぎて……」
「そうか?家族で泊まるなら普通だろう?」

 普通の感覚が違い過ぎるのだ。普通の人なら一生泊まる機会のない部屋だ。何を言っても感覚の違いは変えられない。今はもっと大切なことがあるのだ。

「普通ではないですが……。それよりも、桂が寝ている間に話を」

 珍しくぐっすりと眠っている桂は、まだまだ起きそうにない。夜寝なくなると困るが、今は話をした方がいいと判断した。

「そうだな。ソファに座ろう」
「はい」

 陸斗が部屋にあるキッチンスペースでコーヒーを淹れ二人を見守る。

「あの日、俺はさくらをパーティー会場で見て惚れたんだ」
「えっ!?」
「だから、さくらを追いかけた。バーで飲んでいる姿をずっと見ていたんだ。いつ声を掛けようかと思っていた」
「……」
「傷ついているさくらに漬け込むように関係をもったが、あの時点で俺はさくらと一生を共にするつもりだったんだ」


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