運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
「陸斗」
「ああ」

 さくらの返事を聞き、優秀な秘書に後は任せる。江藤の動き次第では、早々に発表したほうがいいかもしれない……。

 いつもながらに、名残惜しく店を後にする。ホテルに戻ると、陽をはじめ企画開発部のメンバーが揃っていた。

 が――

「兄さん、江藤さんは帰ったみたいだ」
「……」
「どういうことです?」

 無言の怜に代わり陸斗が訊ねる。

「部屋はチェックアウトされていて、フロントに退職するとメモを預けていました」
「そうですか……。無責任ですがせいせいしましたね。何か仕事に支障は?」

 陸斗からは思わず本音が出る。

「ありません」

 陽がはっきりと断言する。他の企画開発部のメンバーも揃って頷いている。

「あとは、こちらで動きますので、現地視察の結果を踏まえ報告書を作って下さい。明日改めて会議をします」

 陽は、緊急事態に視察せず戻ったが、他のメンバーは見てきている。

「「「はい」」」

 お荷物の江藤がいなくなり、不安因子が一先ず片付た。
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