運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

情熱の夜

 翌日、ランチ営業が終わる頃、怜が店に迎えに来てくれた。真っ先に桂の元に行き抱っこする。

「怜さんお仕事は?」
「大丈夫だ」

 何が大丈夫かわからないが、気にしなくても良いのだろう。前回と同じく、さくらは大きな荷物を持って出掛ける。

「お願いします」

 運転手の陸斗に声を掛け車に乗り込んだ。怜が慣れた手つきで桂をチャイルドシートに乗せてくれる。

 ホテルに着くと、ロビーで怜の両親がそわそわした様子で待ち構えていた。

「さくらちゃん、桂くんいらっしゃい」

 怜の母が桂に向って手を広げると、嬉しそうに手を伸ばす。突然存在を知らされたばかりの孫と祖父母とは思えない馴染みようだ。桂の男性に対する人見知りも、身内には感じるものがあるのか、怜の父や弟には全くしないのだから不思議だ。

「部屋へ行きましょう。目立ってます」

 駐車場に車を止め、大きな荷物を持ってロビーに入ってきた陸斗は、目立つ一行を部屋に促す。

 そして、着いた両親の部屋で、さくらをはじめ怜までもが驚いた。

 両親の部屋は、怜の隣のスイートルームだ。そこには、スイートルームに似つかわしくないおもちゃやオムツや服がたくさん用意されていた。



< 174 / 235 >

この作品をシェア

pagetop