運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
 安産祈願にも、出産準備にも、彩葉が一緒に行ってくれた。姉であり、母のような存在だ。彼女なくして、今のさくらの安定した生活はありえない。

 予定日を迎える頃には、はちきれんばかりのお腹になり、どこへ行くにも彩葉が付き添ってくれている。

 予定日を三日程過ぎた朝方、急に締めつけるような痛みが来た。少しすると収まり、また始まる。初めての出産のさくらには、陣痛かもしれないが、どの程度の痛みになったらいいのかが分からない。十分間隔になれば連絡を入れることになっているが、十分以上だったり、短かったりと判断出来ない。

 痛みが来たらいつでも連絡しなさいと彩葉に言われていた。痛みが引いたタイミングで彩葉に連絡を入れる。

「もしもし。さくらちゃんどうしたの?」

 寝起きの掠れた声だが、すぐに出てくれた。

「朝早くにごめんなさい。さっきから痛みが来てて」
「わかった。すぐに行く」

 詳しくも聞かずに駆けつけてくれる。

「大丈夫?」

 電話から数分、着替えだけした状態だ。

「定期的に痛みが……。イタタタタッ」
「病院に連絡するわね」

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