【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 本当に、この人は私と離婚する気があるのだろうか。

 最初から離婚前提だったはずなのに、まるでその気配すら見せないなんて。

 なにを考えているのかわからない、美しい横顔を見つめながら、胸の奥がひそやかに重く沈んだ。

 ──期間限定の契約結婚だったはずなのに。

 私は、ちゃんと離婚できるのだろうか。

 艶やかな黒髪に朝の光が差し込み、長い指がカップを持ち上げる仕草ひとつさえ絵になる。

 そんな彼の放つ色気に胸がざわめき、小さくため息を零す。

 すると夫がちらりと横目を向け、瞳にかすかな影を宿した。

 私のため息の意味を、別のものと勘違いしたのかもしれない。


 その一瞬に潜む痛みに、私はまだ気づかないままでいた。
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