【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 そのとき、甲高いクラクションが響き、黒塗りの車が横づけされた。

「社長、お待たせしました!」

運転席から顔を出した高城さんの陽気な声。

 せっかくの空気を壊されたせいか、社長は睨むように目を細める。

満面の笑顔だった高城さんの表情が、みるみる曇っていった。

「……俺、お邪魔でした?」

「本当にお前は、いつも肝心な所が抜けている!」

 怒鳴りながら後部座席のドアを開ける社長。

「でも、高城さんって完璧な秘書に見えますけど……」

 私が小声でつぶやくと、社長は呆れ顔で肩をすくめた。

「あいつは調子がいいだけだ。これからわかるさ」

後部座席に乗り込むと、高城さんがどこか照れくさそうに笑っていた。

褒められたわけでもないのに、なぜか嬉しそうで──正直、少し不思議だ。

 車が静かに走り出してしばらくすると、急激な眠気が押し寄せてきた。

瞼が重くて、どうしても開けていられない。

何度も首がかくんと落ちそうになり、そのたびにハッと目を開ける。

(だめ、今寝たら絶対に爆睡して起きられなくなる……)

 そう必死に自分に言い聞かせても、抗えない。

 ふいに、首がもう揺れなくなった。

 気づけば、柔らかくて温かな感触に支えられている。

 社長が、そっと肩を貸してくれていたのだ。

 彼の体温がすぐ隣にある。

規則正しい鼓動まで伝わってきて、安心感に包まれる。

(……社長って、意外と優しい人なのかもしれない)

 そんな思いが胸をかすめた瞬間、心地よい眠気にすべてを委ねてしまった。

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