【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第四章 王子様の魔法

目を開けると、私はふかふかのベッドの中にいた。

ここは社長のマンションのゲストルームだ。

　そうだ。昨日の私は、車の中で爆睡し、マンションに着いたところで社長にお姫様抱っこされそうになった瞬間に目を覚ましたのだった。

──さすがに、あれは起きて正解だった。二日続けて醜態をさらすところだったのだから。

もっとも起きたのはいいが、眠気は限界で、ふらふらしながらも気合と根性でどうにかお風呂だけは済ませて倒れ込むように眠った。

私は昔から、ときどき気を失うように眠り込んでしまうことがある。

学校に通いながら家事もこなして、常に慢性的な寝不足だったせいで、体が勝手にスイッチを切ってしまうのだ。

（昨日は早めに寝たし、体が楽……って、今何時!?）

　慌てて時計を見ると、針は八時を指していた。

「八時⁉　遅刻だ！」

　社長は!?　謝らなきゃ！

　私はパジャマ姿のまま部屋を飛び出し、リビングへ駆け込んだ。

「ごめんなさ──」

　言葉は途中で止まった。

リビングに入った瞬間、目に飛び込んできた光景に頭が真っ白になる。

（しゃ、社長が……料理をしてる!?）

しかも、ご丁寧にデニム風のエプロンまで身につけて！

「おはよう。ちょうど良かった、今できたところだ」

　朝の光を浴びながら、社長が爽やかに笑う。

その姿は、まるで雑誌の表紙から飛び出してきた王子様みたいにキラキラしていた。

　これは、一体、どういうこと？