憧れのCEOは一途女子を愛でる
自室に戻って半そでTシャツの上からパステルイエローのカーディガンを羽織り、下はスリムなジーンズに履き替えた。
クリップで止めていた髪は下ろしてブラシを通し、真っすぐに整える。
メイクをしようかとコスメボックスに手をかけたものの、開くのをやめた。
祖父を迎えに行くだけだし、私がノーメイクかどうかなんて誰も気にしていないだろう。
「行ってきます」
母に声をかけ、紳士用の祖父の傘を片手に家を出た。
雨は先ほどよりも勢いを増してアスファルトに強く打ちつけている。足元をよく見て歩かないと靴の中まで濡れそうだ。
雨靴を履いてきたらよかったかなと考えながら、どこに寄り道するでもなく駅の近くにある目的地へと足を速めた。
「こんにちは」
ビルの二階にある碁会所を訪ね、笑顔で方々にあいさつをした。
「おお、冴実ちゃんか。いつ見ても美人さんだな」
「え、ありがとうございます」
何度か訪れているうちに、どうやら私の顔と名前は多くの人に知られるようになったみたいだ。
祖父と同性代の人たちがまるで自分の孫に接するように気さくに話しかけてくれるのでうれしい。
「倫治さん、冴実ちゃんが来とるよ」
テーブルと椅子がびっしりと並べられている部屋の一番奥で、祖父が腕組みをしながら碁を打っていた。
相手をしてくれているのは、祖父とは旧知の仲だという辰巳さん。
辰巳さんはいつ会ってもにこにことした柔和な笑みをたたえて、恰幅のいい体型をしているのもあってとてもやさしい印象だ。
ふたりのそばまで行き、「こんにちは」と頭を下げてあいさつをした。
クリップで止めていた髪は下ろしてブラシを通し、真っすぐに整える。
メイクをしようかとコスメボックスに手をかけたものの、開くのをやめた。
祖父を迎えに行くだけだし、私がノーメイクかどうかなんて誰も気にしていないだろう。
「行ってきます」
母に声をかけ、紳士用の祖父の傘を片手に家を出た。
雨は先ほどよりも勢いを増してアスファルトに強く打ちつけている。足元をよく見て歩かないと靴の中まで濡れそうだ。
雨靴を履いてきたらよかったかなと考えながら、どこに寄り道するでもなく駅の近くにある目的地へと足を速めた。
「こんにちは」
ビルの二階にある碁会所を訪ね、笑顔で方々にあいさつをした。
「おお、冴実ちゃんか。いつ見ても美人さんだな」
「え、ありがとうございます」
何度か訪れているうちに、どうやら私の顔と名前は多くの人に知られるようになったみたいだ。
祖父と同性代の人たちがまるで自分の孫に接するように気さくに話しかけてくれるのでうれしい。
「倫治さん、冴実ちゃんが来とるよ」
テーブルと椅子がびっしりと並べられている部屋の一番奥で、祖父が腕組みをしながら碁を打っていた。
相手をしてくれているのは、祖父とは旧知の仲だという辰巳さん。
辰巳さんはいつ会ってもにこにことした柔和な笑みをたたえて、恰幅のいい体型をしているのもあってとてもやさしい印象だ。
ふたりのそばまで行き、「こんにちは」と頭を下げてあいさつをした。