憧れのCEOは一途女子を愛でる
「急に誘って悪いな」

「ううん。私はいいんだけど加那太は明日から実家でしょ? 大丈夫だった?」

「ああ」

 前に会ったときに、たしかそう言っていたはず。
 加那太はあまり家族の話はしてくれないけれど、もうすぐ卒業だし、たまには顔を見せに行こうとしているのだろう。

「ワインでも飲む? 冴実はすぐ酔うから一杯だけな」

「え、どうしたの?」

「外でこうして食事したかったんだろ?」

 私がコクリとうなずくと、加那太はコース料理と共にグラスで赤ワインを注文した。
 週末に彼の部屋で会えるだけでも私は幸せだったけれど、本当はこんなふうに外で食事を楽しむこともしたかった。
 今日は仲直りのために彼が私に合わせてくれた。そう考えるとうれしくて自然と顔が綻んでくる。

 しばらくするとワインがテーブルに届き、ふたりで乾杯をした。
 そのあとに続いて出て来た料理の味も素晴らしく、特にアイナメのソテーや仔牛のグリルは絶品だった。

「おいしいね。来月の加那太の誕生日にも来られたらいいな」

 たまにでいい。クリスマスや誕生日などの記念日にレストランで食事をすると、普段とは違った気分を味わえる。
 私はコースの最後に運ばれてきたクリームブリュレをスプーンで口に運びながらにっこりと微笑んだ。


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