恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「こんなときに悪いが、話がある」
長く続いた沈黙が破られると、筧さんはそっと体を離し私の両肩に手を添えた。
まだ涙で濡れる目で筧さんの顔を見上げる。
筧さんはじっと私の目を見つめたまま口を開いた。
「離婚前提でも構わない。偽装の妻になってもらえないか」
え……?
聞こえてきた言葉が突拍子もなくて、理解が追いつかない。
離婚前提の、偽装の妻……?
「この前婚約者のフリを頼んだばかりなのに、混乱させてしまい申し訳ない。だが君がよければ、この際、偽装の妻になってほしい。こんなふうに泣いている姿を見て、今がそのときだと思った」
「え……あの、それは……?」
「契約結婚、という形だ。俺にも時間がない。妻の座を狙う候補と何人も会わされ、もう限界なんだ。一度結婚してしまえば、もし離婚したとしてもしばらくは何も言われないはずだ。もちろん、君の生活のすべてを保障する。関係を終えても、その後の人生に不自由がないよう約束もする」
とても冗談を言っているような表情ではなく困惑する。
筧さんの目をじっと見つめたまま、次の言葉を待つしかない。
「話を呑んでもらえるなら、俺は君を全力で守る」