恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
契約結婚、偽装の妻……。
突然の申し出に思考回路は混乱を極めていた。
たとえ契約、偽装だとしても、筧地所という大会社を背負う彼の相手が私に務まるのだろうか。
そんな戸惑いを抱えながら、同時に自分の心が幸せを感じられるのかを真剣に自問自答する。
筧さんの偽装の妻になることで、私の未来は今より明るい方向に向かうのだろうか。
『大丈夫か』
筧さんに腕を掴まれ、そう訊かれた、あのときの瞬間が脳裏に蘇る。
あの瞬間、私はほかの誰かのビジョンで世界を見ているような感覚に陥った。
それくらい神々しく、非現実的だった。
あのとき見た夢は、まだ続いているのだろうか……?
だとすれば、私はその夢に自分の未来を託してみてもいいと、ふっと胸がわずかな期待に包まれた。
「私なんかに ……務まりますか?」
涙で濡れた目で筧さんを見つめる。
気づけばそう口にしていて、自分でもハッとした。
筧さんの親指がそっと涙袋に触れる。
「君にしか頼めない」
濡れた目もとを拭った筧さんは、微笑を浮かべて私の顔をじっと見つめ返した。