恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
キッチンに戻り、調理後の片付けを始める。調味料を仕舞っていると、「仕事はどうだった」と向こうから筧さんの声が聞こえた。
手を止め、キッチンから顔を出す。
「仕事、ですか?」
「ああ。今日は大丈夫だったのか」
「はい。朝一番で上司に退職を申し出ました。それから、引継ぎなどの話も早速」
「そうか。あの彼は? 君が出ていったことは……?」
思いがけず湯島くんのことを訊かれ、昼間のことを思い出す。
面倒くさそうな、冷めきった表情が目の裏に蘇った。
「特に、問題なく……話はまとまりました。部屋の解約は、手切れ金だと思ってやっておくって」
どんな顔をしたらいいのかわからず、とりあえず浮かべた笑みが引きつる。
筧さんは「そうか」と静かに言い、またスプーンを手に取った。
「すみません。気にかけていただいて。ありがとうございます」
「礼を言われるようなことじゃない」
筧さんはそう言うけれど、素直にうれしくて自然と感謝の気持ちが口から出ただけだった。
もう一度「ありがとうございます」と言い、小さく頭を下げる。