【SR】だるまさんが転んだ
テレビや雑誌でこの光景を見れば、その場には悲鳴や戸惑いの声が響くだろう。


だが実際の場には、悲鳴所か雲の流れる音すら聞こえてきそうなほど静かだった。


その男が殺されるまでと、何一つ変わった所は無い。


唯一有るとすれば、両隣の店が男から流れてくる血を嫌い、品物を片付け始めた事だけだ。


呆然としていたい俊介の身体を動かしたのは、記者としての熱だった。


先ほどまでと変わらぬ表情で立っている少女の元に行き、しゃがみ込んで目の高さを合わせた。


「こういう事は良くあるのかな?」


僅かに上擦りながらも、最後まで言葉を発せた自分を誉めたかった。


しかし、少女からは潤んだ視線が帰ってくるだけで、口を開こうとする素振りは見られなかった。


発音が悪くて聞き取れなかったという事も全否定は出来ないが、なんとなくでも意味は伝わったはずだ。
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