【SR】だるまさんが転んだ
チャオミンの手を引きながら歩き出したヴェンは、迷わずに出来上がったばかりの死体へ向かっていった。


造作もなく心の臓に突き刺さっていたナイフを抜き、血を払いそれを腰に差した。


抜き取られた刺し傷からは、体内に残っていた血が流れ出した。


呆然とそれを見ていた俊介は、我に返り地べたからリュックを拾い上げて後に続いた。


後ろから見る二人の兄と妹は、最近の日本ではちょっとお目にかかれなくなった構図だ。


幼い頃に読んだ、童話の兄弟のようだと俊介は眺めていた。


俊介がそれを微笑ましく見れないのは、ヴェンの携えている黒光りしている自動小銃であり、血の色を残したナイフの所為だった。


冷静さを取り戻し始めた俊介の頭には、幾つかの疑問符が浮かんでいたが、沈黙を守って歩き出した。


右手の遠くには山々が広がり、左手に見える夕日がそれを朱く照らしている。


日本で見るよりも、こういう場所で見る夕日の方が壮大で綺麗に映るのは、皮肉なものだと俊介は呟いた。


二人の後ろを付いていくと、風景は次第にバラックが乱雑に並ぶ所へと来ていた。
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