Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
「実はね、初恋を実らせたんだ」
「初恋……ですか?」
意外過ぎる言葉に六花は驚いた。あの先輩の口から"初恋"というワードが出てくるなんて思わなかった。
「あっ、意外とか思った?」
「……少し。先輩、とても人気者でしたから。でも……好きな人がいたのだと思えば納得です」
彼は離れた場所にいた妻と子どもに手を振ると、幸せそうに表情を緩める。夫であり、父親であるその柔らかな雰囲気に、六花は羨ましさを感じていた。
もし妊娠のことを宗吾に話したとして、彼が受け入れてくれる可能性は、たとえ僅かでもあったのだろうかーーいや、だって彼は疑似恋愛って言ったじゃない。体を重ねたのだってただの相性を知るための手段というだけ。愛情なんて存在しなかった。
ありもしないことを考えるのはもうやめよう……そう思った時だった。
「そういえばさ、最近仕事でなんだけど貴島と会ったんだよ。彼のことって覚えてる?」
六花は体が凍りつく。まさか宗吾の名前が出てくるとは思わなかったからだ。
「フランスワインのイベントに出席した時に彼も来ていてさ。元々サークルも一緒だったけど、あの頃はそんなに話したことはなかったんだよね。でも似たような仕事をしてるし、ワインの好みも近くて話が盛り上がっちゃったんだ」
「そうでしたか……確かにあの頃の彼はワインよりも仲間って感じでしたからね」
「そうそう。それに君とは犬猿の仲だったし」
苦笑いをして顔を背けた六花の様子に何かを感じ取ったのか、翔は彼女が握りしめる袋の中身について話題を変えた。
「何を拾ってたの? 貝殻?」
「いえ、シーグラスです」
「あのガラスの欠片の?」
「そうなんです。私、昔からアクセサリーを作るのが好きだったんですけど、なかなか売れなくて。そうしたらシーグラスが上手いこと売れたので、今はこれを生活の足しにしてるんです」
「仕事は?」
「こっちで生活するのを決めてから辞めちゃったんです。今は貯金を切り崩しながらの生活で」
その言葉を聞いた翔は突然口元を緩め、興味津々というふうに六花の顔をじっと見つめる。
「その話、じっくり聞きたいなぁ」
六花は意味がわからず首を傾げる。しかしこの再会こそが、六花の生活を一変させたのだった。
「初恋……ですか?」
意外過ぎる言葉に六花は驚いた。あの先輩の口から"初恋"というワードが出てくるなんて思わなかった。
「あっ、意外とか思った?」
「……少し。先輩、とても人気者でしたから。でも……好きな人がいたのだと思えば納得です」
彼は離れた場所にいた妻と子どもに手を振ると、幸せそうに表情を緩める。夫であり、父親であるその柔らかな雰囲気に、六花は羨ましさを感じていた。
もし妊娠のことを宗吾に話したとして、彼が受け入れてくれる可能性は、たとえ僅かでもあったのだろうかーーいや、だって彼は疑似恋愛って言ったじゃない。体を重ねたのだってただの相性を知るための手段というだけ。愛情なんて存在しなかった。
ありもしないことを考えるのはもうやめよう……そう思った時だった。
「そういえばさ、最近仕事でなんだけど貴島と会ったんだよ。彼のことって覚えてる?」
六花は体が凍りつく。まさか宗吾の名前が出てくるとは思わなかったからだ。
「フランスワインのイベントに出席した時に彼も来ていてさ。元々サークルも一緒だったけど、あの頃はそんなに話したことはなかったんだよね。でも似たような仕事をしてるし、ワインの好みも近くて話が盛り上がっちゃったんだ」
「そうでしたか……確かにあの頃の彼はワインよりも仲間って感じでしたからね」
「そうそう。それに君とは犬猿の仲だったし」
苦笑いをして顔を背けた六花の様子に何かを感じ取ったのか、翔は彼女が握りしめる袋の中身について話題を変えた。
「何を拾ってたの? 貝殻?」
「いえ、シーグラスです」
「あのガラスの欠片の?」
「そうなんです。私、昔からアクセサリーを作るのが好きだったんですけど、なかなか売れなくて。そうしたらシーグラスが上手いこと売れたので、今はこれを生活の足しにしてるんです」
「仕事は?」
「こっちで生活するのを決めてから辞めちゃったんです。今は貯金を切り崩しながらの生活で」
その言葉を聞いた翔は突然口元を緩め、興味津々というふうに六花の顔をじっと見つめる。
「その話、じっくり聞きたいなぁ」
六花は意味がわからず首を傾げる。しかしこの再会こそが、六花の生活を一変させたのだった。