Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
 そんな会話をしている間に、車は湖のそばにある有名な神社の駐車場に停まる。六花は不思議そうに窓の外を見やる。

「せっかくここまで来たし、温泉だけじゃ物足りないだろ? あまりたくさんは回れないけど、少し観光してから帰ろうと思ってさ」
「いいの? こういう所に来ると、旅行してるなって気分になるね」

 車から降り、宗吾の差し出した手をすっと握る。昨日は躊躇いがちだったのに、今日はどこかくすぐったい気持ちになった。

 鳥居を抜け、木々が生い茂る中、本殿へと繋がる階段を登っていく。(おごそ)かな雰囲気が漂い、清らかな気持ちになった。とはいえ、昨夜から激しく動き続けた体には、この長い階段は相当な苦労を要した。

 ようやく階段を登り切ると、本殿にはたくさん人が参拝のために並んでいる。六花と宗吾もその列の後ろについた。

「そういえばここの神社の御利益って、確か縁結びだったよね。テレビで見たことがある」
「らしいね。でも縁といっても、恋愛だけじゃないからね。友達だったり、仕事、あとは家族の縁とかさ」

 家族と聞いた時、娘のことを思い出してドキッとした。そういえば昨日もこんなことがあった気がする。確か私には守るものがあるという話をした時、二人で守ることは出来ないのかと聞かれた。

 まさか子どもがいることがバレてるーー? そんなことはないと信じたいが、可能性はある。

 由利先輩と宗吾は親そうにしていた。ただ一昨日は久しぶりに会ったようだった。とはいえ私は娘の父親については誰にも話していない。だから子どもがいることがバレていたとしても、それが宗吾の子どもとは結びつかないはず……。

 列は少しずつ前へと進み、六花と宗吾は本殿の前に辿り着く。二人は賽銭箱へお金を入れると、揃って目を閉じて手を合わせた。

 神様、どうかみんなが健やかに、穏やかに過ごせますようにーー。そして願わくば……幸せな未来が待っていてくれますようにーー。

 六花が目を開けると、宗吾が彼女の顔をじっと見つめていたので、気まずそうに顔を背ける。

「何?」
「いや、すごい真剣にお祈りしてるから。何をお願いしたのかなと思って」
「そんなの言うわけないじゃない。叶わなくなっちゃうかもしれないでしょ」

 どんな結果になるかはまだわからないけど、最後の日に打ち明けると決めたんだ。このことはまだ口にするわけにはいかない。
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