Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
それから境内の中を遠回りをして、いくつかの社を参拝しながら駐車場まで歩いていく。本殿をお参りして帰る人が多いのか、こちらの参道は静かで清々しい空気が漂っていた。
階段をたくさん登った甲斐があり、時々木々の間から水面が光を浴びて美しく輝く湖が見えた。
途中に展望台と書かれた看板の矢印に沿って歩いていくと、湖を見下ろす高台に拓けたスペースがあり、いくつかベンチが置かれていた。二人は休憩も兼ねてそこに座った。
「なぁ、聞いてもいいか?」
「答えられることならね」
六花が宗吾の方に視線をやると、彼は真っ直ぐに湖を見つめていた。
「あの日……俺の家を出た後、どんなふうに過ごしていたか知りたい」
いつかは聞かれるだろうと想定していた。だから驚きはなかった。ただどこまで話すかは悩んでいた。
「言いたくないこともあると思う。全部じゃなくていい。六花がいなくなって一年半……いや、もっとか。その間のことを教えてほしい」
子どもとそれに関わることは伏せるとして、なるべく個人情報に繋がる話も避けたかった。とりあえず大まかに説明すれば良いだろう。
「宗吾の部屋を出てから、仕事も辞めてしばらく実家で過ごしてた。それから祖母の家のそばに引っ越して、今は新しい仕事も見つけてのんびり生活してるよ」
「祖母の家って?」
「それは……言いたくない。でも今は良い出会いをさせてもらえて、自分のペースで仕事をしたりしてる」
すると宗吾の眉がぴくりと動き、唇をぎゅっと結んだ。
「いい出会いって……もしかして男?」
「あはは。それはないって。あなたと別れてから、誰ともそういう関係にはなってないもの。いい出会いっていうのは由利先輩のこと。あと奥様の萌音さんも。いつも助けてもらってるの」
「あぁ、パーティーにも一緒に来てたしな」
六花はハッとする。まずいことを口走っただろうか。萌音さんと一緒にいるところを見られている。先輩から情報が漏れていれば、住まいや娘のことがバレる可能性もあった。
「遅くなると道路が混むかもしれないし、そろそろ行かない?」
話題を変えようとして苦し紛れに言った言葉だったが、ありがたいことに宗吾が納得したように頷いた。
「それもそうだな」
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間だった。宗吾は六花の肩を抱き寄せて耳元に唇を寄せる。
「今夜はどこに泊まろうか。また六花に誘ってもらえるように、しっかり誘惑するつもりだから覚悟しとけよ」
囁いたものだから、耳に吹きかかる宗吾の息遣いに力が抜けそうになり、六花は耳まで真っ赤にして下を向く。
本当におかしい……宗吾にこんなに心も体も乱されてる……。彼の言葉一つで、一喜一憂している自分が恥ずかしい。
何より期待してる自分に気付かれたくなくて、六花は宗吾より先に駐車場までの階段を再び降り始めた。
階段をたくさん登った甲斐があり、時々木々の間から水面が光を浴びて美しく輝く湖が見えた。
途中に展望台と書かれた看板の矢印に沿って歩いていくと、湖を見下ろす高台に拓けたスペースがあり、いくつかベンチが置かれていた。二人は休憩も兼ねてそこに座った。
「なぁ、聞いてもいいか?」
「答えられることならね」
六花が宗吾の方に視線をやると、彼は真っ直ぐに湖を見つめていた。
「あの日……俺の家を出た後、どんなふうに過ごしていたか知りたい」
いつかは聞かれるだろうと想定していた。だから驚きはなかった。ただどこまで話すかは悩んでいた。
「言いたくないこともあると思う。全部じゃなくていい。六花がいなくなって一年半……いや、もっとか。その間のことを教えてほしい」
子どもとそれに関わることは伏せるとして、なるべく個人情報に繋がる話も避けたかった。とりあえず大まかに説明すれば良いだろう。
「宗吾の部屋を出てから、仕事も辞めてしばらく実家で過ごしてた。それから祖母の家のそばに引っ越して、今は新しい仕事も見つけてのんびり生活してるよ」
「祖母の家って?」
「それは……言いたくない。でも今は良い出会いをさせてもらえて、自分のペースで仕事をしたりしてる」
すると宗吾の眉がぴくりと動き、唇をぎゅっと結んだ。
「いい出会いって……もしかして男?」
「あはは。それはないって。あなたと別れてから、誰ともそういう関係にはなってないもの。いい出会いっていうのは由利先輩のこと。あと奥様の萌音さんも。いつも助けてもらってるの」
「あぁ、パーティーにも一緒に来てたしな」
六花はハッとする。まずいことを口走っただろうか。萌音さんと一緒にいるところを見られている。先輩から情報が漏れていれば、住まいや娘のことがバレる可能性もあった。
「遅くなると道路が混むかもしれないし、そろそろ行かない?」
話題を変えようとして苦し紛れに言った言葉だったが、ありがたいことに宗吾が納得したように頷いた。
「それもそうだな」
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間だった。宗吾は六花の肩を抱き寄せて耳元に唇を寄せる。
「今夜はどこに泊まろうか。また六花に誘ってもらえるように、しっかり誘惑するつもりだから覚悟しとけよ」
囁いたものだから、耳に吹きかかる宗吾の息遣いに力が抜けそうになり、六花は耳まで真っ赤にして下を向く。
本当におかしい……宗吾にこんなに心も体も乱されてる……。彼の言葉一つで、一喜一憂している自分が恥ずかしい。
何より期待してる自分に気付かれたくなくて、六花は宗吾より先に駐車場までの階段を再び降り始めた。