Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
* * * *

 車に乗り込み、密な空間に二人きりになると急に緊張感が走る。

 さっき宗吾があんなこと言うからよーー言われなくても彼を求めてしまうのに、口に出されると意識してしまう。

 それを見透かされないように平静を装いながら、今度は六花の方から質問をしてみた。

「宗吾は? あの……お見合いとかはどうだった?」

 宗吾は六花を一瞥してから、小さなため息をついた。

「六花がいなくなったから、仕方なく父親が勧める見合い相手に会ったよ」
「あ、会ったんだ……」

 当然のことだと思いながらもやはり動揺してしまう。

「まぁね。そうするしかなかったっていうのもあるけど。なんかもうどうでも良くなって、お前が言ったみたいに、結婚してからお互いを知るのもアリな気がしてさ」

 宗吾の幸せを願っていたはずなのに、いざその話を聞いてしまうと心がモヤモヤする。その先を知りたいような、知りたくないような複雑な気持ちになった。

 その想いがきっと表情にも表れてしまったのだろう。宗吾はニヤッと笑う。

「妬いた?」
「妬いてません」
「ふーん。まぁでもやっぱり無理だった。何回か会って……相手の女性には申し訳ないけど、全く興味が湧かなくてさ。だから鬼のように仕事をこなすことを条件に、お見合いを断ってもらったんだ」
「そうだったんだ……なんかごめんなさい」
「別に六花が謝ることではないよ。擬似恋愛生活の後に契約結婚を断られた可能性だってあるし。ただ逆の可能性もあるって考えたら、何かが引っ掛かって結婚する気になれなくなった」

 それは以前六花も考えたことがあった。もし妊娠していなかったら何かが違っていたのか……ただ歴史にもしもはない。考えても無駄だと思っていた。

「人はやったことより、やらなかったことへの後悔の方が心に残るーー」

 六花がポツリと呟くと、宗吾はハッとしたような顔になってから、口の端をうっすらと上げる。

「そう。正にそれなんだ。俺も同じことを考えたよ。ただそんな時に……父親から新たな仕事を任されて日本を離れることになって、帰ってきたら六花と再会した。このチャンスを逃すわけにはいかないって思った」

 確かに六花にとってもこの一週間は、自分自身の気持ちと、宗吾との関係に一区切りさせる良い機会に違いない。

「今の俺には六花とのこの時間があればいい。あの日に置いてきた時間を繋ぐことが大事なんだ」
「そうね……」

 彼の横顔を見ながら六花は頷く。無責任にも一度逃げ出してしまった宗吾との時間。きちんと向き合う必要があるからこそ、今この瞬間を大切にしたいと思った。
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