隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
私は自分の生い立ちを平凡だとも、幸せだとも思わない。
人は違った人生を歩んでいるのだろうという自覚もある
でも、だからと言って不幸だとは思っていない。
私には愛してくれる両親と、見守ってくれるおじいさまやお兄ちゃんがいる。
高校時代の一番荒れていた時期にこの場所を訪れた私は、長い時間をかけておじいさまから両親の話を聞いた。
どんなに素敵な夫婦だったのか、どんなに素晴らしい人だったのか、そして私がどれほど愛されていたのかを知り、恨めしく思う気持ちは消えた。
どれだけ否定しようとしても、ここには一条の両親が私を愛していてくれた痕跡がはっきりと残っていたからだ。

「ここはお前の部屋だから、いつでも好きな時に来なさい」
おじいさまにそう言われ、当時の私は泣いてしまった。
それからはこの部屋が父さんと喧嘩をした私の避難場所になり、思春期だった高校生時代には何度もお世話になった。
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