幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
「…千紘、償いならもうじゅうぶんだよ」

「え?」

「ウチのためにいっぱいお金を出してくれてありがとう。
私に気を遣う必要はもうないよ。
責任を取って結婚なんて、そんなの別によかったんだよ?」

今にも涙が出そうで、それを吹き飛ばすように大袈裟に笑った。

「戸籍にバツはついちゃうけど、千紘ならいい人を見つけられる。
千紘が幸せなら、私はそれでいいから」

なぜか千紘はぽかんと口を開けて、私を見つめている。

「…姫は、無理して俺と結婚してくれたのか?」

「は?逆でしょ?千紘が…
罪悪感を持ってて、こんな背中で貰い手のない私を奥さんにしてくれたんでしょ?」

「姫はそんなふうに思ってたのか?
俺は姫に申し訳ないことをしたと思ってる。
嫌われるのが怖くて、ずっと黙ってた。
だから、姫に三下り半を突き付けられても仕方ないと思ってる。
今日お義父さんに聞いて、それなりに覚悟をしていた。
だけど、俺は火傷よりももっと前から姫のことが好きだった。
ずっと姫一筋だ。責任を取るために結婚したなんて、そんなつもりは全くない」

今度は私がぽかんとしてしまう。

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