幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
約束の時間を20分近く遅れ、廊下から早足の足音が聞こえ、障子戸が開いた。

「遅くなりました」

現れた男性は両親から聞いていた人物像とはだいぶかけ離れていて、何かの間違いかと思った。

彼はハンカチで汗を拭いながら向かいに座り、丁寧に頭を下げた。

「高見沢 義友(たかみさわ よしとも)と申します。
渋滞にはまってしまって…お待たせしてすみませんでした」

『すらっとした体型というよりは、筋肉がついてる感じかな』

『顔もねえ、日本男児らしくて素敵だったわよねえ』

お父さん、お母さん、ものは言いようだけど、これはひどすぎます。

筋肉じゃない。完全にぜい肉。

30歳と聞いているけど、こんなウエストサイズのスラックスを履いている人は私の会社でもなかなか見かけない。

ファストフードに置いてある白髪のおじさんの人形のほうがまだスリムに見える。

背も低そうだな…164cmの私とどっちが高いだろうと思うくらいだ。

そして、太すぎる眉とその2分の1くらいしかない細くて小さい目。立派な鼻に厚すぎる唇。要は目以外はみんなサイズ大きめだ。

そして、髪の毛は多分前のほうから徐々にはげるタイプだと思う。すでにおでこがだいぶ広い。

両親を恨みながらも、顔が引きつらないようににこりと微笑む。

なめるなよ。こっちは受付嬢。日々会社の顔として働いているんだ。

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