幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
夜20時。カードキーの開錠の音がして、千紘が帰って来た。

「ただいま」

「おかえり」

ソファから立ち上がってドアに駆け寄った私を、千紘はカバンが床に落ちるのも気にせずギュッと抱きしめた。

「…ただいま、姫」

「…おかえりなさい」

私もその大きな背に腕を回した。

幸せをかみしめるように千紘の腕にこもる力が強くなり、はあっと息を吐く。

「こんな毎日をずっと夢見ていた。
本当に叶ったんだな」

「ふふっ」

千紘の言葉が嬉しくて、頬が緩んでしまう。

千紘は私の後ろ髪をなでて顔を起こさせ、そのままキスをした。

どんどん深いキスになっていき、身体がとろけそうになったとき、千紘は唇を離した。

「…ダメだ。このまま続けたら今にも姫を抱きたくなる。
いや、すでに抱きたい。
でももう少し『ただいま』『おかえり』のくだりを堪能したいし…」

ブツブツ言いながら頭を抱える千紘に笑ってしまった。

単純だろうか。私はこんなに千紘のことが好きだったのか、なんて今さら思う。

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