幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
「夕飯作ってみたんだけど、食べる?」

「作ってくれたのか。もちろん食べる」

「言っとくけど料理あんまり得意じゃないからね。
実家暮らしでお母さんがしてくれてたし」

「大丈夫。姫の美的センスがあれば料理なんて簡単だ」

また訳の分からないことを… いや、あえて突っ込まないでおこう。

これから一緒に暮らしていくんだからある程度スルーすることを覚えないと、突っ込めば突っ込むほど千紘ワールドが展開されて私の頭は混乱する気がする。

私が夕食の準備をしている間に千紘は部屋で着替えて出てきた。

千紘は欲しいおもちゃを見つけた子供みたいに「うわあ」と声を漏らして目をキラキラ光らせる。

大袈裟だな。

定番の肉じゃがをメインに、酢の物やだし巻き玉子。ちょっと地味な彩りになってしまった普通の料理だ。

今までいいものばかり食べてきたであろう千紘には物足りないかもしれない。

「いただきます」

千紘は熱い肉じゃがにハフハフ言いながら、嬉しそうに箸を進める。

「…おいしい?味、大丈夫かな。
自分の味覚だけじゃ自信がなくて…」

恐る恐る聞いてみたけど、千紘は興奮しながら

「おいひい」

と答えてくれて安心した。


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