幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
小さなテナント事務所から始まったというこの会社は、今や都心の15階建の自社ビルだ。

1階はコンビニ、2階はファミレスになっている。

そこでも賃貸料を稼いでおり、昼にはそこを利用する社員も多いため一石二鳥。

何も考えていなさそうなのに、千紘は意外と頭がいいというかズル賢いというか…商売に向いているのかもしれない。

「風見遥と申します。よろしくお願いします」

新しい制服に身をまとい、総務課で斜め45度で頭を下げる。

拍手が盛大すぎるのは、きっと社長夫人ということで周りが気を使ってくれているからなんだろう。

難しい仕事はないだろうけど、ミスをして千紘に恥をかかせないようにせねば。

「せっかくなので、今日はハピネスの仕組みを一から教えますね」

私の教育係としてついてくれたのは、3つ年上の政井さんという男性だ。

これも本当は千紘が嫉妬して「教育係は女性に」と言ったらしいけど、香坂さんに「公私混同が過ぎます」と一喝されたらしい。

香坂さんはかなりしっかりしていて、秘書としてとても素晴らしい人だと思う。

棗くんの件のとき、香坂さんが千紘の拳を止めてくれなかったらと思うと今さらながらゾッとする。


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