非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「え? じゃあ、このパソコンは?」
「それが……」

一毬が声を出そうと息を吸った時、大きな音を立てて研究室の扉が開かれた。
飛び込んで来たのは牧だ。

牧は普段の落ち着いた雰囲気からは、とても考えられない程に取り乱しながら、倉田のデスクのある部屋へと駆け込んできた。
その姿を見て、一毬の緊張が一気に高まる。

「社長が……」

牧の声はかすれている。
倉田も牧の様子がいつもと違うことに気がついたのか、パソコンをデスクに置くとそばに寄った。
牧が一旦ぐっと閉じた瞼を、ゆっくりと開く。

「社長が……何者かに襲われて、病院に運ばれたと連絡がありました」

その言葉を聞いた途端、息を止めた一毬は、頭が真っ白になり後ろによろめいた。

――湊斗さんが……襲われた……?

受付でパソコンを受け取ってから一毬を取り巻いていた悪い予感は、最悪の事実として目の前に現れた。

「一毬ちゃん!」

後ろに倒れ込む一毬の身体を、倉田が慌てて支える。

「なんで……そんなことが?!」

倉田が絞り出すように言った。
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