非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 『苦しんでいる人のために、自分の力を使いたい』


 ――あぁ、そうか。


 湊斗だったら、まずはプレス発表会の開催を一番に考えるだろう。

 この研究が実用化されることで、救われる人々のために、先に進めなければならないと。

 そして、湊斗自身が前に進むために……。


 一毬は両手にぐっと力を込めると、静かに牧の顔を見上げた。

 その表情を見て、牧がほほ笑みながらうなずく。


「この研究には、社長の想いが込められている。佐倉さん、頼みます」

 牧は深々と頭を下げると、そのまま部屋を駆け出して行った。

 湊斗が襲われて怪我をしている状況で、牧も倉田も動揺していないはずはない。

 それでも自分のやるべきことを進めようとしている。


 一毬は倉田からパソコンを受け取ると、デスクに腰を下ろす。

 そして思いつく限りの単語をひたすら入力していった。

 一毬がパソコンに向き合っている間、倉田の元には楠木が作成した配布資料のデータと、研究室のデータが送られてきた。

 倉田はそれらを元に、プレゼンの準備を進めている。
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