一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?
レッスン5.あの夜の続きを何度でも

「えっと……。第三会議室であってるよね?」

 光莉はノートパソコンと筆記用具を抱え、会議室へと向かっていた。
 九月に入ると、TAKIZAWA社内に上海新ホテルのブロジェクトチームが発足した。
 驚くべきことに光莉もプロジェクトチームの一員に抜擢された。
 というのも、先輩である柳瀬が退職者の引き継ぎに追われプロジェクトチームへの参加が見送られたため、光莉に白羽の矢が立ったのだ。
 光莉自身、部署を跨ぐような大規模なプロジェクトチームに参加するのは初めてのことで緊張している。
 キックオフミーティングが行われる第三会議室にも、会議が始まる十五分前から集合するほど。
 自分が一番乗りだろうと思っていたが、会議室の前には既に先客がいた。見覚えのあるシルエットに光莉は喜びの声を上げた。

「遊佐さん!」
「よ!久し振り、出水ちゃん!」
「どうして日本に!?」

 遊佐は柳瀬の同期であり、一年前までは同じ法人営業部で働いていた光莉の先輩だ。海外事業部に異動し、シンガポールに転勤になったはずなのにどうして日本にいるのだろうか。

「俺も上海新ホテルのプロジェクトチームのメンバーなんだ。日本での出荷作業が終わるまでは本社に戻ることになったんだ。二ヶ月だけだけどね。そのあとは上海に飛ぶ予定」

 遊佐も同じプロジェクトに参加すると聞いて、光莉は顔を綻ばせた。遊佐がいれば百人力だ。

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