スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(困ったものだな……)
本命からは相手にされず、どうでもいい女性からはアプローチされる。
どうしたものかと思案に暮れているとプライベートのスマホが鳴った。
液晶に映し出された名前を見てげんなりする。
……妹の露希だ。
「もしもし」
『この間置いてった服、今日取りに行くから』
枕詞を使わず本題に入るのは露希の悪癖だ。
(買った洋服のことなど普段は忘れるくせに、なぜ今回に限って覚えているんだ……?)
露希がマンションに置いていった服は先日、光莉に渡してしまった。久志は仕方なく適当に誤魔化すことにした。
「置いていった服は手元にない」
『は?どういうこと?』
「捨てた」
『捨てた!?』
「どうしても必要なら同じものを買ってやるから怒るなよ」
少しも悪びれる様子がないのが気に食わなかったのか、露希はますますヒートアップした。
『同じものなんてもう売ってないわ!再販の最後の一枚なの!』
「そんなに大事なものならうちに置いて帰るな」
『大事なものだから兄さんのマンションに置いておいたの!』
……どういう理屈だ。
露希の主張もどうかしているが、自分の言い訳も大概だという自覚もある。
「とにかく、ないものはない。諦めてくれ」
『兄さん、何か私に隠してない?』
話を早めに切り上げようとしたのが仇となった。
後ろめたい事実が裏に隠されているのは確かで、返事が一拍遅れた。
『今夜行くから!』
露希は一方的にそう言うと、電話を切ってしまった。一般常識には疎いくせに、こういう勘だけは鋭くて我が妹ながら嫌になってくる。