スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「瀧澤専務、青空クルーズの社長から電話があり、来週の金曜の夜にぜひお食事をと」
秘書の中野から会議中にかかってきた電話の伝言を受け取ると、久志は俄かに頭が痛くなってきた。
気ままな独身の久志には、お見合い紛いの食事の誘いがひっきりなしにおとずれる。
青空クルーズの社長と聞いて、苦い記憶がまざまざと蘇ってくる。今後の仕事に繋がるものがあればと、会食に出向いたところ、不意打ちで娘を紹介されそのまま食事に突入した。
チラチラと顔を見られながら、食事をとるのは非常に不快だった。
「その日は空けておいてくれ。食事は断ってくれて構わない」
その日は久し振りに光莉とテニスをする約束をしていたのだ。緊急性の低い用件は後回しにする。
「また、テニスですか?」
食事を断るように指示すると、中野から思い切り嫌な顔をされた。
中野は秘書としては優秀だが、久志を支配下に置こうとする言動が近頃どうも目に余る。
「予定を調整するのが君の役目だろう。プライベートには口出し不要だ」
そう牽制すると中野は顰めっ面で執務室から出ていった。
プライベートに口を出すぐらいなら可愛いものだが、最近は取引先や、下請け企業についてまで難癖つけるのはいただけない。
経営的判断は久志の仕事であり、秘書の中野には何の権限もない。
秘書の意味を履き違え今後も我が物顔で振る舞うなら、相応の処置が必要となる。
(潮時かな……)
叔父からどうしてもと請われ、中野を秘書につけたがやりにくくて仕方がない。叔父の魂胆はわかっているつもりだ。姪っ子である中野を使い、久志を抱き込もうという作戦だ。