一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?

「同じヨヨヨ侍好きに免じて今回の件は水に流してあげるわ。その代わり、コラボカフェに付き合いなさい」
「ああ、先月オープンしたやつですね!」
「露希、迷惑をかけるな」
「兄さんには関係ないでしょ?私に嘘をついたくせに!」

 露希から冷たくあしらわれ、久志は途方に暮れた。

「私も行ってみたいと思っていたので、ぜひお供させてください」
「ほら、いいって言ってるじゃない?」

 ……なぜ、快諾する。
 二人はあろうことか久志の目の前で楽しそうに連絡先を交換し始めたのだった。

「ふん。あの子、なかなか趣味がいいじゃない」
「もう大人しく座っていてくれ……」

 露希を自宅マンションまで送る車中、久志は助手席に座る妹に対し、どういう感情を向けるべきか考えあぐねいていた。
 運転中でなかったら、ハンドルに突っ伏しているところだ。
 露希の突飛な行動には慣れている久志だが、此度の行動には腹を据えかねる。

(なぜ、私を差し置いて彼女と出掛ける約束なんか取り付けているんだ!)

 ……断じて実の妹に嫉妬してるわけではない。
 
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