スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「出水さん!待ってくれ!」
瀧澤に追いかけられる光莉を通行人が次々と振り返っていく。
ジワリと滲んだ涙が後ろに流れていく。本当は十日ぶりに会った瀧澤の背中に抱き着いてしまいたかった。蕩けるようなキスをねだりたかった。夜景を見て綺麗だとはしゃいでいたかった。
「出水さん!お願いだ!どうか私の話を聞いて欲しい……!」
光莉はとうとう瀧澤に追いつかれ、その腕の中に閉じ込められた。
これが最後だと覚悟し、ぎゅっと目を瞑る。
(久志さんが好き……)
……でも、好きという気持ちだけではダメなのだ。
瀧澤に一方的にリスクを背負わせておいて、今の関係を続けられない。好きだからこそ瀧澤の邪魔をしたくない。
「……ごめんなさい」
そう告げると光莉は瀧澤を振り切るように、再び駆け出した。瀧澤はもう追ってはこなかった。大通りでタクシーを捕まえ飛び乗る。後ろを振り返ることはできなかった。
(……一晩だけにしておけばよかった)
瀧澤にキスをされ、抱かれるたびに愛しさが膨らんだ。
知れば知るほど好きなって、もっと一緒にいたいと願ってしまった。
これはそのしっぺ返しだ。なにも考えずにのうのうと瀧澤の甘い手ほどきに溺れた自分への罰だ。
失恋の痛みすら、瀧澤から教わった。
光莉はタクシーの中で嗚咽した。