出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
走り始めて三十分ほどで、住宅街にある建物の駐車場に車は滑り込んだ。
一階にはコンビニエンスストアが入り、二階には二十四時間営業のスポーツジムの看板が掲げられている。三階まであるようだが何かはわからなかった。
敷地内の駐車場の一部はコインパーキングで、一部は月極めだ。龍の車はその月極めの部分に停められた。
「コンビニ寄るけど何かいる?」
「いえ。私のことはお気になさらずに」
「じゃ、ちょっと電話する」
シートベルトを外した状態で、龍は上着からスマートフォンを取り出す。少し画面を操作すると、呼び出し音が漏れ聞こえるそれを自分の耳に当てた。
「俺だ。起きてたか? 今、下にいる。なんかいるか?」
電話の向こうからボソボソ聞こえるのは男の人の声のようだ。龍は機械的なやり取りではなく、明るく砕けた口調のまま尋ねていた。
(なんだかお友だちと喋ってるみたい……)
相手は社員なのだろう。実乃莉は耳に届く会話に知らぬふりをしながら、社長らしからぬ会話にそんなことを思っていた。
「――りょーかい。すぐ向かう」
龍は耳からスマートフォンを離すと実乃莉に向いた。
「悪いな。買い出しに付き合ってくれ」
「はい。かしこまりました」
実乃莉が仰々しい返事をすると、龍はそれを聞いて眉を顰めた。
「あんた……普段からそんな話しかたか?」
「え……?」
「いや、俺は社長って肩書きは付いてるがそう偉くもない。畏まらなくていいんだが?」
そうは言っても年上を相手にする時は、こんなふうに話すことのほうが日常だ。いきなり友だち相手のようには話せないし、と戸惑ってしまう。
「けれど……」
口籠る実乃莉を見て龍は溜め息を吐く。
「じゃあ……うちの社員を参考にしろ」
素っ気なくそう言うと、龍は車から先に降りて行った。
一階にはコンビニエンスストアが入り、二階には二十四時間営業のスポーツジムの看板が掲げられている。三階まであるようだが何かはわからなかった。
敷地内の駐車場の一部はコインパーキングで、一部は月極めだ。龍の車はその月極めの部分に停められた。
「コンビニ寄るけど何かいる?」
「いえ。私のことはお気になさらずに」
「じゃ、ちょっと電話する」
シートベルトを外した状態で、龍は上着からスマートフォンを取り出す。少し画面を操作すると、呼び出し音が漏れ聞こえるそれを自分の耳に当てた。
「俺だ。起きてたか? 今、下にいる。なんかいるか?」
電話の向こうからボソボソ聞こえるのは男の人の声のようだ。龍は機械的なやり取りではなく、明るく砕けた口調のまま尋ねていた。
(なんだかお友だちと喋ってるみたい……)
相手は社員なのだろう。実乃莉は耳に届く会話に知らぬふりをしながら、社長らしからぬ会話にそんなことを思っていた。
「――りょーかい。すぐ向かう」
龍は耳からスマートフォンを離すと実乃莉に向いた。
「悪いな。買い出しに付き合ってくれ」
「はい。かしこまりました」
実乃莉が仰々しい返事をすると、龍はそれを聞いて眉を顰めた。
「あんた……普段からそんな話しかたか?」
「え……?」
「いや、俺は社長って肩書きは付いてるがそう偉くもない。畏まらなくていいんだが?」
そうは言っても年上を相手にする時は、こんなふうに話すことのほうが日常だ。いきなり友だち相手のようには話せないし、と戸惑ってしまう。
「けれど……」
口籠る実乃莉を見て龍は溜め息を吐く。
「じゃあ……うちの社員を参考にしろ」
素っ気なくそう言うと、龍は車から先に降りて行った。